第11回キラク川柳６月の月間優秀作品7月20日掲載作品

段一つ鬼の形相車いす

人が好きお世話大好き介護好き

胸張って言える介護ができました

俺たちに明日はないさと気取る老い

毎日がドッキリカメラ見てるよう

あと十年生きたくもなし逝きたくもなし

咳をしても一人ではない温介護

リハビリの窓に貼ってる旅パンフ

デイに行くおうちが大好きなんだけど

母親が小さくなって待っている

認知症望んだことでないけれど

子の顔が分からなくても生き写し

まだ生きるつもりで祖母は貯金する

なんてことないことにでも出るなみだ

七転び八起きは祖母の一日に

背中なであの日に戻る走馬灯

元々は夫婦他人と言い聞かせ

いい介護AIプラス人の愛

寝るときにさよならという母である

お日さまも雨もいいものさあ見よう

一日が終わりふとんで泣き笑い

「帰りたい」母の一言今悔やむ

だとしても最期はキミのそばがいい

無い命あると思わす子の心

介護とは金ではないが金が要り

辻褄の合わぬ話で盛り上がり

この人の親があの世で見てござる

きざむ音今はなつかし母の膳

徘徊は一二散歩五里霧中

帰りたくなくなるからと母は来ず

父介護胸の鼓動を胸で聞く

他人より自分で診ると会社辞め

辛かったけれどあの日に戻りたい

認知症日々の暮らしが新しい

重力を粗末にせずに散歩する

警察へ親を迎えに午前二時

出来たこと出来なくなって年の功

疲れたら施設の母に会いたくて

まだ逝かぬ妻の墓前で独り言

認知症恨み辛みの無い人生

骨折りのくたびれ損は無い介護

義足よしエイハブ気取るリハビリ日

半歩先いつもヘルパーそこにいる

黄泉の国見てきたような顔で起き

かくれんぼ元気な母はもういない

太陽が眩し過ぎたら月を見る

起こしてと妻に抱かれて妻を抱く

でも嬉しい4枚届いた年賀状

気にするな心の段差俺が消す

母介護無理はするなと親の顔