鈴木ひとみさんコラム

It's My Style

1962年、大阪に生まれる。「’82ミスインターナショナル準日本代表」などの栄冠に輝き、モデルやTVのアシスタントとして活躍。1984年に交通事故で頸椎を骨折し、下半身にハンディを負う。車椅子陸上競技世界大会では金メダルを獲得。2004年アテネパラリンピック射撃日本代表。良き理解者でもある夫、伸行氏との関わりは介護者と被介護者の理想的スタイルの1つとも言える。現在は執筆や講演、NHK障害福祉賞審査員など、ハンディをものともせず生き生きと活躍する彼女に様々な人々がエールを送っている。

風通しの良い人生を楽しみましょう

 遅ればせながら、積極的に体を鍛えています。朝起きたら、ベッドの上で腕立て伏せをして、ストレッチで関節や肩甲骨を動かします。たった15分の短い時間ながら、毎日続けています。そして、日々の食事にも気をかけるようになりました。
そもそも長年、体を大事にしてこなかった気がします。麻痺している足に手が触れると驚くほど冷たい時があります。「それは仕方のないこと」として何もせずに、そのまま放置していました。これが感覚のある上半身ならば、たまらず暖を取るところなのに、同じ体にもかかわらず、差をつけていたわけです。この下半身の叫びが体の歪みになり、筋肉を拘縮させ、また代謝の悪さとしても現れ、嫌というほど自分に教えてくれました。
 皆さまは自分の体を、一時的に天から借りているもの、と考えたことが有りますか。
自分はその管理人であって、いつか返す日までの管理次第で、ほころびが出たりガタがきたり、逆に長持ちさせることもできます。私のような途中の事故で、完全な体とは言えなくても丁寧に扱うことは、管理を任されたものの役目です。長い間、この借り物を心から愛していない自分がいました。別に大事にしてもしなくても他人に迷惑がかかるわけではない、と不遜な気持ちがどこかにありました。年齢を重ねると共に、ようやく自分の体を愛する気持ちと心が一致してきました。自分の体を愛する気持ち、すなわち障がいを受け入れる心です。どこか深層心理では受け入れていなかったのかもしれません。人生の終盤に来て、今ごろ一致したのかい!とあきれながらも淡々と穏やかな気持ちでいます。
 自分を愛おしく思えてからは体のメンテナンスも、さほど苦でなく続けられています。
 「上半身は元々の自分で、下半身は長年音信不通の親戚のようでしたが、ようやく再会を果たして自分と一致した!」感じです。
 皆さまは、心の底から自分を愛せていますか。障がいがあろうとなかろうと難しいことかもしれません。どうぞ自分の心の奥深くと対話してみてください。
 残された人生が軽やかで風通し良くなりますように、と願っています。