第11回キラク川柳４月の月間優秀作品5月20日掲載作品

人形の如き祖父母が愛おしい

寝たきりの父といつかは立ち話

人生の時間にはないバックギア

願わくば介護の先に未来あれ

忘れたい事がいっぱいあるのかも

たそがれを老いと若きがそいて行く

介護したあとで思えば一(いち)ページ

介護士に表であたり裏で詫び

ケンカした親と介護で仲直り

みみずの字書けて長寿を感謝する

坂道を息ぎれかくし車イス

リハビリで輝き、幸せ取り戻す

わかってる終わりくることわかってる

介護していたはずなのに介護され

最終章介護の旗が揺れて待つ

ロボットは高くつきそう私やる

千羽鶴一羽一羽数えてる

徘徊はフリーウオークと言い換える

今セピア昔は七色認知症

なにもかもやらずに介護しています

手伝うと差し出してきたもみじの手

デイケアで萎んだ花がまたひらく

介護士も阿修羅のような手が欲しい

認知症私の知らぬ若き父

最初から最期まで見るその強さ

したかったハグを介護でやっと出来

百年も生きてきたよとうれし泣き

折れぬよう介護の心に持つたわみ

きれいごと言わないあなたのきれいな目

昨日より明日を語り続けよう

この介護子らはじっと見ているよ

介護終えどうしてだろう悔いばかり

下り坂あっという間にゴール前

強くなれ優しくなれとする介護

孫が来る腰を伸ばしてお出迎え

今になりやっと親子の時間持ち

薄味は愛の濃ゆさの裏返し

夫から来世も一緒かと聞かれ

肩の荷をストンとひとつ深呼吸

駄菓子屋に寄り道します車椅子

おぼろ気な思いを救う介護の手

紙おむつあてて四度目の桜かな

アリガトーだけ繰り返す義母の笑み

デイ行く日朝から何度も服着替え

背負いつつ啄木の句を口ずさむ

田植えならオラも行くぞと車椅子

待ちわびる今日の介護に妻が来る

意味のない言葉でも良い笑顔なら

介護するたまの笑顔に励まされ

握る手は介護目的だけでなく